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漢方閑話㉞ 腰部脊椎管狭窄症

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2019年6月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇中学時代の同窓会が開かれました。1946年4月今泉国民学校入学。新しい憲法が公布されそれに守られ育てられてきました。そんな中みなは80年の歳月を刻んできました。傘寿です。「しわくちゃばあさんになっちゃった。」などの笑い声が聞こえる中で驚いたのは脊柱管狭窄症になった男性群です。そのうち一人は中学、高校と進むにつれて体格が向上し頑健でした。その彼が車いすの生活だそうです。
◇ヒトの背骨(脊柱)は7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎とそれに続く仙骨、尾骨から成り立っています。背骨(脊柱)を構成するそれぞれの椎骨には孔が開いていてその椎孔は連なって脊柱管(背骨)を形成しています。脊柱管の中は脊髄神経が通り脳脊髄液に満たされています。脊椎管狭窄症は脊柱管を支えるじん帯の肥厚や椎間板の突出によって脊髄神経の神経根が圧迫され狭くなり炎症を起こします。腰で狭窄を起こすものは腰部脊柱管狭窄症と呼ばれています。脊髄神経(馬尾神経)、血管、血流が圧迫され足や腰がしびれ、歩行時に歩けなくなる間欠性跛行(かんけつせいはこう)などの障害を起こす病気です。腰部の脊髄神経は馬尾神経と呼ばれこれに沿って走行する血管とが狭窄により圧迫されます。それに続く坐骨神経に障害が起こり腰、臀部、大腿、下肢にしびれ、痛みが起こります。椎骨と椎骨の間には水分に富んだ椎間板がありクッションの働きをしています。加齢によりこの水分が失われますと椎間板は弾力性を失い後部にとびだすように変性します。椎間板が変性を起こしますと背骨はぐらつき安定性を失いそれを支える靭帯も肥厚して脊柱管は圧迫され炎症を起こし狭窄します。
◇椎骨、椎間板、骨髄液や椎間板の水分の減少など脊椎管狭窄症はそれを取り巻く組織の老化によるものと考えられます。脊柱管狭窄症を漢方の眼で見てみますと骨髄液の減少、椎間板の水分の減少による変性、膨隆、椎骨の劣化、血流の滞り、じん帯の肥厚などの脊柱管狭窄を起こす老齢による劣化はいずれも漢方の腎臓の衰えと考えられます。先天の精を蔵する腎は人体の成長、発育、老化の中枢です。精血を蔵し骨髄、骨・歯を生じます。精血不足が脊柱管の老化を招きます。脊髄、骨、歯は加齢のバロメーターです。100歳人生に向けて腎気・腎精を補い瘀血を除き抗老防衰に勤めたいものです。

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