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漢方閑話㉜夫源病?

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2019年4月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇明るい母娘が「夫源病ですが?」と言って来店されました。「えッ?どんな字を書くのですか?」世事に疎いものにとって冗談にしてもそのような言葉があるのを知りませんでした。母は70代の病弱なご主人を抱えているそうです。ご主人が家にいるときはいつ病気で起こされるかと心配で夜もろくろく休めないと言います。ご主人が病気で入院して家にいない時は母娘も安心して休めると言います。母娘の話し方はそれほど深刻そうには思えません。明るく話しています。ご主人にしては母娘が冗談にも自分のことをそのように思っているとはおちおち病気もしておられないところですが病弱とあってはいかんとも知れません。
◇その「夫源病」は実際にどのようなのかと尋ねてみますと右の首筋からのひどい肩こりと耳鳴りでした。舌苔は白く気の滞りによって痰濁が体内に溜まっていると思われます。舌の裏側は静脈が怒張してどす黒く瘀血の存在が思われます。痰濁と瘀血が互いに結合して強い肩こりとなっているのです。その肩こりが首筋や肩で気血の運行を妨げ気血が上下にめぐらず滞り気が上昇して降りられず、気は熱を帯び火と化して耳鳴りとなって現れているものと思われます。痰濁を除き瘀血を活血し解毒することが治療の道かと思います。病弱なご主人を抱えていることはそれだけでも心配の種でいつも心中を支配し気持ちが塞ぎ時には気を晴らしたくなるのもむりからぬことです。今日母娘で外出してきたように日頃ご主人をお世話する二人が連れ立って外出できる時があればその時に日頃の憂さを晴らし心のびのびとするのも治療の一環となるでしょう。
◇高齢期を迎えた夫妻にとって体力の老化は進みます。漢方ではヒトの成長、発育、老化は腎臓の働きによるものと考えてきました。この世に生を受けて両親からの先天の精を本に養育され成長し脾胃の後天の本によって大人になります。その成長の本になるのが腎です。腎は命の本とされこの命門の火が身体を温め、身体を滋養します。生を受けて後は脾胃が栄養をつかさどります。耳には少陽経や腎経などの経絡がめぐっています。その経絡が風、寒、湿、熱、燥気に外感し、喜び、怒り、憂い、もの思い、悲しみ、恐れなどの気の失調によって耳鳴りは発生します。「夫源病」といって明るくふるまううちに痰濁,瘀血を解消したいものです。

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