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漢方閑話㉛ 痒疹

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2019年3月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇50代の女性がからだの痒みを訴えて訪れました。2年位前に顔にブツブツが出来はじめ今は背中が痒くてたまらないと言います。本人がシャツの背中をまくり上げ見せてくれますと大豆大からそら豆大の100個にも及ぼうとするピンクがかったおでき(ぶつぶつ)が背中をおおっています。一部はかじったせいか集簇し縦横に広がっています。糜爛はありません。担当医は「乾燥性×××皮膚炎、掻きむしったために苔癬化した。」と言われたかな?と。大きなやけど跡かイボのようにも見えます。かくと粉(ふけ)が出ます。きっかけはわからない。虫刺され、風邪など思い当たるところはありません。子供の頃に喘息があり、今は花粉症があります。両親にもそのような病歴はないと言いますが父親が乾燥して痒さで掻きむしっていたのを思い出すと言います。診療所からは副腎皮質ホルモンと保湿剤の混合の軟膏剤が処方されています。気温のせいではないとはいうもののこのところの寒さと乾燥は本人を一層苦しめています。お風呂に入って温まりたいがそうすると一層痒くなり眠れない。簡単なシャワーで過ごしていると言います。
◇背中一面をおおう多くのブツブツ(結節)とかゆみ(痒疹)を起こしているのは風熱、血熱、湿熱、熱毒などによるものと考えられます。漢方では痒みを起こすのは風邪(ふうじゃ)によるものと考えています。その風は寒、熱、湿、燥の気と結びつきます。このブツブツ(結節)による痒み(痒疹)は結節性痒疹と呼ばれるものと思われます。結節性痒疹は虫刺されによるもの、胃腸障害、ホルモン失調、精神神経障害などによるものとされていますが本人に思いつくことはありません。この病気は成人の女性に多くなかなか治りにくいと言われています。結節を起こしているのは体内に滞っている湿邪です。長いこと滞り湿熱となり頑固な頑湿となり血と結びついて結節の一因となります。頑湿は体内に滞った湿邪ですから同時に体内の生理的水分である津液を消耗してしまいます。本人は「体内の水が涸れたようで痒い」と訴えます。「乾燥性皮膚炎」なら当然のことと思いますが大気の乾燥とともに津液の消耗が痒みを増長させているものと思われます。夜も眠れないような激烈な痒みをやわらげ、「水枯れ」と訴える体内の津液の消耗と滞り、瘀血を除くべき処方しています。

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