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漢方閑話㉖ 異常発汗と悪寒

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2018年9月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇60代の女性は長年「自律神経失調症」に悩まされてきました。6年前には動悸がしてパクパクする、息苦しいなどの症状が続き3年くらい苦しんできました。心療内科を受診し、「気にしないように」と言われるものの気持ちが悪く耳鳴りがして食欲も落ち体重も減ったと言います。首を絞められるような気がして息をするのも苦しい、心療内科、脳外科、産婦人科を受診しますが甲状腺、ホルモン検査、血液検査にも異常はありません。治療を続けこれらの症状も気にならないほど楽になったと言います。ところが今度は強烈な悪寒に苦しめられます。風邪ではなく自律神経のせいだと思いながらもはげしい大量の汗と悪寒に苦しめられます。汗は下着からズボンまで毎日ではないものの大量の汗をかくと言います。汗をかかないようにとクーラーに当たろうとしますが今度はその冷気に悪寒がして今年の猛暑の中でクーラーの冷房にも敏感になってしまいかかれず、スーパーに入っても寒くてがまんができません。
◇心療内科を受診し漢方薬の加味逍遙散を4か月ほど服用しましたが効果はなく「それではやめましょう」と担当医。今度は自分で高麗人参を求めて服用しますが思うようにいきません。風邪でもないのに悪寒と発汗、ヒトのからだはどうなっているのでしょう。そのような訴えをする人は他にもいます。暑さに耐えられず氷を食べたところ寒くて仕方がない。思い余って救急センターにかけ込みます。担当医はかぜと診断して処方しますが今度は大量の汗をかいて以来寒くて仕方がないと言います。暑くて汗が出て止まらない、そのくせ寒い・・・。
◇古人はこのような状態を気の失調と考えてきました。人体は気から成り立っています。その気は人体を守り生長、発育を促進し、からだを温め、外邪から防衛し、代謝を調節しています。そのような気を古人は衛気(えき)と呼んできました。その衛気は脈外を守り脈管の中を流れる営気(えいき)・・(血の流れ)から生まれます。営衛の気は脈の内外で共に調和を保ちながら運行しています。衛気(えき)が強すぎて営気が弱かったり、営気が強すぎて衛気が弱いと営衛の気は調和を失い汗が漏れてしまったり、営気が弱まると衛気を生み出せずに体表を防御できず悪寒が発生します。営衛の不調和を改善することが悪寒と漏れ出る汗を収斂する道と考えられます。

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