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漢方閑話㉔ しろなまず

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2018年7月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇暑い夏がやってきます。強い日差しの中で日焼けに気をもむ方もいる一方で皮膚の一部が脱色して白く抜けて美容上苦しむ人もいます。原因ははっきりしていませんが紫外線から皮膚を守っているメラニン色素が作られないことです。皮膚は0.1ミリから0.3ミリのごく薄い表皮に基底層、有棘層、顆粒層、角質層から成っています。一番底の基底層で作られたメラニン色素は皮膚代謝の中で最後は垢となって体外に排泄されていきます。しかし中にはメラニン色素が体表に残り肝斑(しみ)となる一方また一部のヒトはメラニン色素の産生に異常をきたし色抜けを起こす人もいます。白斑です。白癜风ともいわれ中国史の中で髄の時代の古典にもその名は記載され風邪によって侵されると古人は考えていたようです。
◇風は頭からつま先まで全身を駆け抜けます。皮膚を搏(たた)き皮膚には衛営(えいえ)の気がめぐっています。衛(え)気は脈外をめぐり営(えい)気は脈中をめぐって互いに調和しています。衛気は陽気で風寒の邪気に侵されますと衛営は調和を失い気血の流れは滞り皮膚は栄養を受けられず白斑を生じます。風の性質は変化に富み身体のどこでも白斑を生じさせる可能性があります。脾胃は気血生化の源です。脾胃が弱まりますと気血の生化が不足し皮膚の肌目の腠理が荒れて風寒の邪気を侵入させやすくなり、気血の流れは滞り皮膚は栄養を失い白斑を生じます。
◇現代社会はストレス社会です。肝気がのびやかになりませんと肝鬱となり気滞血瘀となり皮膚は栄養を失い色素の脱失を招きます。疲労や精神的な負担増は腎精、肝血の消耗を招き精血は皮膚を営養せず白斑を発生します。冷えによる営衛気血の不和、精神的な負担による肝鬱、気滞血瘀、肝腎不足による精血不足によって白斑は生じてくると考えられています。冷えを治し、脾胃を健康にし、ストレスをためない、血の流れを良くして瘀血を生まないことが皮膚代謝の改善の道と考えられます。地方の有名大学を卒業し、単身当地に赴任した女性は鼻の横に白斑を生じたと来店されました。内科的な訴えはなく親元を離れての精神的負担によるものと考えられます。気血を補いめぐらし肝鬱を除き気分をのびやかにして活血化瘀して服薬を続けていますと顔に発生した白斑が幸いなことに小さくなり目立たなくなったと言います。

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