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漢方閑話⑳ 蕁麻疹

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2018年1月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇一陣の風が吹いてきて顔や頬を撫でていきます。風が去った後一部のヒトの皮膚に残ったのは激しい痒みとでこぼこと浮腫状に腫れた皮疹でした。それはやがて何事もなかったように消えてゆきその痕さえも残しません。人々はそれを瘾疹(いんしん)「かくれできもの」と呼び後の西洋医学の蕁麻疹の病態に符号したものでした。この忍者のような瘾疹は風が皮膚に働きかけ引き起こしたものあるいはからだの変調から身体自身がこのぶつぶつした皮疹の風団を招いたものでしょうか?漢方では体が弱ると体内にも風が発生すると考えられています。内風です。血が不足すると風が生じ風を治そうとすれば血を治せば内風は自ずと解消すると考えられています。この内外の風邪が合わさって蕁麻疹を起こしているのです。内因と外因は互いに影響しあっていますからそのどちらが原因とはっきりとは区別はできません。発症した皮疹の中には赤い皮疹もあればうす紅色の肌色に近い白い皮疹もあります。風邪に侵されたのですから一度は衛営の気を調えて風邪を除かなくてはなりません。風邪が滞れば内にこもり熱化しさらなる病態の悪化に進展します。風は万病の本です。寒、熱、湿などと結びつき病態を発揮します。風寒、風熱、風湿、風湿熱などの病邪が蕁麻疹を引き起こします。湿邪はしつこい性質です。身体にまとわりついてなかなか取り除けません。舌を見ると白や黄色のべっとりした苔がついています。冷えた飲料水の飲み過ぎは脾胃を冷やし失調させ痰・湿・飲を生ずる発生源になります。
◇50代の女性は以前に月経不順がつづき漢方薬を服用されたことのある方でした。その後も多嚢胞卵巣症候群や胸に水が溜まったとか花粉症、風邪などで漢方薬を服用してきました。家業は忙しく冷蔵庫から製品を取り出す仕事に追われています。その方が蕁麻疹になり診療所からは抗ヒスタミン剤が処方されています。恐れながら患部を見せていただきますと下腹部の白い地肌に大きな紅斑が浮き出ています。発症してまだ3日程です。かゆみを訴えます。舌質は赤くうすい黄色の苔がついています。急性の蕁麻疹は風熱が多いと言われています。風熱を祛(さ)り胃の熱を冷まし大腸からは熱毒を排泄して解毒し脾胃の湿熱を除き真っ赤に燃えた血熱を冷まし痒みを除きますと病症は除かれました。

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