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漢方閑話⑯ 飲む目ぐすり

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2017年9月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇電車の中で横一列に座る乗客。どの人もスマホを見つめています。町ゆく人も前方から何が向かってこようとお構いなしに立ち止まり通行を妨げスマホとにらめっこです。テレビやパソコンなどの普及によって人々は液晶画面に接する時間が長くなり果ては幼児のゲーム機にまで及んでいます。人々は目を酷使する時代に生きているのです。その先に近眼、白内障や緑内障、加齢黄斑変性などの視力障碍につながりかねないとも限りません。直近の厚労省の発表では糖尿病患者が推計で1000万人に上るとの活字が新聞紙面のトップに踊っています。漢方では加齢によって起こる目の病気、眼精疲労、ドライアイ、白内障などに事前に対処する方針が掲げられてきました。未病先防、抗老防衰などの方針です。幼児から高齢者まで成長を促し老化を防ぐ処方が考えらえています。
◇漢方では目の病気は肝の病と考えられています。肝、心、脾、肺、腎の五臓の中で肝は木性の臓器と考えられ、胆、筋、目、春、風などに関連します。その肝を生み出すのは腎で腎は両親の精を受け継ぎ髄、骨、歯などを支配して生長、老化の根源です。腎は肝の母、肺は腎の親という関係があり五臓は互いに相生、相克してバランスを取っています。肺は気を主さどり肺気が鬱滞しますと肝気はのびやかになりません。気が滞れば水も滞り、血も滞って瘀血を発生します。目を養っているのは脾胃です。脾の気は夜10時に盛んになり、午前0時には腎が、2時から4時にかけて肝気が盛んとなり夜明けに備えています。肝腎、脾の精血を生み出すのには夜10時には床に就き脾、腎、肝の精、血、津(しん)液を養わなければなりません。夜更けまでパソコンとにらめっこでは腎精、肝血を消耗し老化を促進してしまいます。眼は肝血に栄養される一方で眼球は水の臓です。水晶体、前房、硝子体、網膜などの目の主要な部位は津液(しんえき)で満たされています。津液が不足しますと眼は乾燥し、痰濁が鬱滞しこれらの部位に障害が発生し眼の焦点が合わなくなります。先輩に糖尿病を発生しその管理が悪かったせいかついには失明し将来を約束された職を失い、マッサージ師になったと言う方がおられます。自覚症状もないために管理をおろそかにして取り返しのつかないようにしたいものです。精血を補い、痰濁、瘀血を去り眼の健康を守りましょう。

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