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漢方閑話⑮ 月経の遅れ

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2017年8月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇30代の女性が来店されました。7日間も便通がなくすっきりせず吐き気がしてお腹が張ります。脳に血が通っていない気がすると訴えますが特に血色が悪いわけでもありません。しかしストレスのためか思いつめたような感じでプライベートの悩みや会社の仕事が多忙のため休みが取れない。胃腸科や産婦人科を受診しています。仕事は事務職です。ストレスが多く生理も45日以上止まってしまったとのこと。思えばこの方、前にも同様な訴えでお会いしたことがありその時は2か月以上もないというのでそれはストレス過剰で気分が鬱滞し肝気が畅(のび)ず月経が遅れていると考え肝気を疎肝しますと幸いにも数日にして来潮したとのことでした。基礎体温表を付けているかと尋ねますと3日前からつけ始めたとのこと。最近はスマホの普及でスマホ上で基礎体温を管理している人も多く見せていただく側からすると小さな画面で何日もの月経周期を追いかけていくのは大変です。従来のようにペーパー上で記録していれば一ページの紙面上で数周期の体温変化を見て取れ一目で健康状態を知るうえで有用です。備考欄には受診記録や体調の変化、内服薬の服薬記録などをメモしておけば自分自身の健康状態を知るうえで有用だと思われます。
◇古人は月経を月の満ち欠けの周期になぞらえ月事だとか、潮の干満に見立ててきました。月経周期は低温気、卵胞期、排卵期、月経前期、月経期に分けられています。月経期には腹痛、頭痛、腰痛など不快な症状が現れます。卵胞期は体調は安定しています。排卵期を迎えますと体温が上昇し月経前期となり体調が崩れる人もいます。イライラ、怒りっぽい、頭痛など諸症状が発現します。
◇漢方はこの月経周期を陰陽の消長転化ととらえ説明しています。月経にかかわるのは子宮だけでなく五臓六腑・衝脈、任脈、督脈などの経絡が月経周期にかかわっていて月経は次の世代を生み出だす出発点とも考えられています。この人は長い間のストレスが積み重なり職場環境に順応せず心(脳)、腎、子宮の性腺軸が失調し相互の交流が滞り心(脳)は肝腎への情報提供が低下し、肝腎は精血の生成と子宮への血の提供が滞り、脾胃は気血の生化、運化が失調しました。心(脳)気を安らかにし疎肝し腎精、肝血を補い、脾胃の昇降を順調にして衝脈任脈を調え陰陽の平衡を目指しました。

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