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漢方閑話⑫ 新しい命

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2017年5月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇ご両親に連れられた小さな女の子が来ました。父親との用件が済んで帰り際にお母さんが「実はこの子数年前に子宝相談でここに来てその後転勤となりこのたびまた富士に帰ってきました。おかげさまでその時に授かった子供です。」と言われます。あの東日本大震災の年に授かってもう入学の時を迎えたのです。
◇別の30才代になる女性は生まれも育ちも北国で雪が多くあまり日のささない土地の出身だと言います。結婚して3年、赤ちゃんを望んでいます。妊娠履歴はなく、月経不順があります。月経周期は40日以上、月経期も1週間以上あります。月経前には調子が悪く便秘や下痢、不眠、胸痛、頭痛、肩こり、胃の調子が悪く胃の痛みがあり、足がむくみ、チョコレート嚢腫があります。体質的に寒がりで風邪をひきやすく、頭が締め付けられるように痛むこともあります。腰痛、寒がり、手足が冷え疲れやすく気分は塞ぎ胸が張る。白いおりものがいつもあり時には黄色くなる。舌は淡く紫がかりぼてっとして周りは歯の痕がついています。このヒトの体質と症状を考えてみますと先天的な要因のほかにその育った自然環境は厳しく、北国の雪と霧が深く、風も強い厳しい環境は腎精の消耗と不足を招きます。腎の陽気の不足はこの人を冷え性の体質に作り上げ気の不足や気の滞りは血の不足や血の滞り(瘀血)のある体質にしたのです。腎精の不足は全身に及び脾は冷え、肝との調和を乱します。女性の生殖を司る腎精が不足しますと胞宮(子宮)の機能が失調し経血の充血と出血に異常を生じるのです。月経周期が長いのは精血不足により卵が育たないためです。月経前に調子が悪い、胸や胃が痛いというのは腎陽が不足し脾気の弱りと肝気の疏泄作用が失調し便秘や下痢となり肝血が不足すると不眠になります。頭痛、肩こり、胃の調子が悪くなるのは肝と脾との調和が乱れるからです。脾と腎陽の不足と肝気の鬱滞は冷えのために血流が滞り瘀血を生じチョコレート嚢腫となります。脾の失調は水湿が滞りおりものとなり熱を持てば黄色になります。足のむくみは肺の粛降作用と肝の疏泄不利です。腎精不足は風、寒、湿邪を招き腰痛や手足の冷えを起こします。風、寒、湿の邪気を除き腎精を補うことが求められます。胞宮を温め肝気をめぐらし脾の運化機能を高めますと新しい命の誕生を見ました。

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