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漢方閑話⑪ 顔のひきつれ

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2017年4月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇70代の女性は腎臓が悪く透析を受けています。5年ほど前受診していた病院でプレドニンを投与されてから目がくるくる回りめまいがする。顔の右半分がけいれんしたようになる。話をしないでじっとしていると右の唇が引っ張られたように口角にえくぼが出来るようにひきつれると言います。受診していた同じ院内の神経内科では「異常はない、うちでやることはない。」と言われています。日常生活は気が紛れてがまんをしていられるが透析中は前や上を向いているので身動きが出来ずつらい。地に倒れるわけではないがめまいがして自分の頭の中でくるくる回る感じがする。他の神経内科では「顔面けいれんではないか?」とも言われています。額やこめかみ、のどから筋肉が口角に向かって引っ張られる感じだというのです。体重は43.5kg身長148センチ。顔色は透析してから色黒になった。疲れる。足首から下がしびれる。ひきつれが頬に来ると動悸がする。腹膜透析の時に腸閉塞を起こし以来その前兆が出ると安全のために入院してくる。息子さんを亡くされお孫さんの養育など問題を抱えていると言うのですが不満をぶちまけるわけでもなく表面は穏やかな女性です。神経のせいだともいわれ抗不安薬も処方されています。神経内科で指摘されたように「顔面けいれん」とすればMRIによる検査が必要ですが診療はそこまでいかなかったようです。顔面麻痺はありません。
◇顔面のひきつれ、めまい、痙攣などの症状を結びつける原因は何か?漢方では風邪によるものと考えられます。いわゆる感冒の風邪とは区別しています。その風邪は外風と内風に分けられます。外風は皮膚のきめ(腠理)が緊密でないと外界の邪を受けやすく経絡、肌肉、関節などが痛み、しびれ、麻痺などを起こします。内風は内臓の病変によって精、血、津(しん)の陰分を損傷し風病(ふう病)を発生します。風を支配するのは肝です。心の熱気と腎の寒気が上下で交わり穏やかな風が生じその変調によって風気は乱れめまい、けいれん、ふるえなどの病症を起こします。それを肝の病症と考えたのです。肝は血を貯蔵し筋を司っています。長い闘病生活によって肝血が不足し内風を発症したものと思われます。風を治すのに先ず血を治すという経験則から肝の陰血を補いますと内風は自ずと熄(止み)病症は終息するものと考えられます。

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