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漢方閑話②

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2016年8月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

坐骨神経痛

◇60代の女性は若い頃から「腰痛」に悩まされてきました。結婚して家庭に入り運動をやめてから家業の商売の販売経理事務などで座ることが多く運動不足になっていたと言います。冬の寒さに弱く冷え性で温めると幾分和らぎます。きっかけは娘さん家族の引っ越しの手伝いです。身長は157cm、体重は54kg。その痛みはイスに腰かけてもお尻が痛くなる。痛みは電気が走るように足の指先にまで走る。まるで感電したようなジンジンした痛みでイスに座ったときにも痛みやしびれがあり、寝返りしても休んでいても痛む。海外旅行をした折には機上で痛みが発生し耐えられなかったこともあると言います。病院でいろいろ検査してもらっても坐骨神経痛に似ているがそうではなさそうだとも言われたそうです。椎間板ヘルニア、脊椎管狭窄症、脊椎管すべり症などの病名が否定され梨状筋症候群という余り聞き覚えのない症候が指摘されます。梨状筋はお尻にある筋肉の一つです。背骨の末端、尾骨の上にある仙骨から大腿骨骨頭に付着しているのが梨状筋です。坐骨神経は腰椎、仙椎から出てお尻で梨状筋と接しその一部は梨状筋を貫いています。ふとももの後ろ、膝を通り下肢に至ります。梨状筋と坐骨神経は互いに隣接しています。もし梨状筋が緊張すると坐骨神経などの神経や血管が圧迫され収縮と弛緩が障害され下肢への神経伝達や血流が滞り坐骨神経の走行部位の痛みやしびれ、知覚異常などの梨状筋症候群による坐骨神経痛を引き起こします。お尻や太ももの後ろに鋭い痛みが出てふくらはぎや足先にまで痛みが走ります。梨状筋が緊張し坐骨神経や血管などの組織が圧迫されることがなければ坐骨神経は順調に走行し血液は滞ることもなく水分の流れも順調です。梨状筋症候群のような症状も漢方では痹症と呼んでいます。痹症を引き起こす原因は長時間のデスクワークによるお尻の圧迫などの生活習慣、過度の運動、運動不足による筋肉の拘縮と萎縮などの上に体質的な原因が重なっていきます。冷え性による陽気不足、高齢化による肝腎の精血不足、外邪による風寒湿の侵襲、血液の滞りによる瘀血,痰濁が梨状筋症候群による坐骨神経痛を引き起こしたものと考えられました。陽気を補い肝腎不足を滋陰補血し去風散寒去湿し活血化瘀去痰化濁しますと梨状筋症候群による坐骨神経痛は除かれました。

 

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