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漢方閑話①

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2016年7月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

腱鞘炎・術後の痛み

◇60代の女性は左手首が痛くそのために腕が上がらない。診てもらうと腱鞘炎と手根管症候群と診断され「腕が上がらないのは腱鞘炎のためだと言われ筋を入れ替える手術をした」と言います。その後も痛みやしびれが残り夜も眠れない。職場はコンクリートのたたきで仕事は手作業の食品加工で寒い時や手を使い過ぎた時は痛みが出やすい。とにかくからだが冷える。手先をよく使う仕事だと言います。その後人差し指と中指が開かなくなる、開くと痛みが出て人差し指はカクン、カクンと鳴るがそのうち人差し指と中指が開かなくなり診てもらうと同様の診断を受け二度目の手術を受けます。その後2か月経っても人差し指の腫れや痛みが取れず夜も眠れない。物も持ちづらい。腕はテーピングでぐるぐる巻きにされむくみで手首から前腕にかけてパンパンに腫れています。

◇腱鞘炎を起こす腱と鞘(さや)は、腱は鞘の中に納まり鞘の中は滑液包で潤され腱の出入りを滑らかにし外部から靭帯が保護しています。その腱はヒトの運動によって自由に鞘に出入りしています。この鞘(さや)が炎症を起こして腫れたり傷んだりするのが腱鞘炎です。腱や鞘は日常同じ動作をなんども行うと炎症を起こし慢性化すると腱鞘が肥厚しトンネル内の空間が狭まり通過障害を起こし痛みとなって現れます。腱の方も毎度しごかれて腱にしこりである結節が出来て鞘の入り口で引っかかり指が曲がったまま伸びなくなるのがばね指(弾発指)です。無理に鞘に収まる時にカクン、カクン、パチンなどと音がします。腕の関節には親指側に橈骨神経、小指側に尺骨神経、真ん中を正中神経が通っています。この手首にある手根管の中には手根骨や靭帯、腱などがつまり、満員電車のような状態の中で正中神経は押し合いへし合いしています。この手根管の中に病理産物が生じたり狭くなったり内圧が上がりますと正中神経は圧迫され支配部位に痛みやしびれがおこります。これが手根管症候群の原因です。この人は腱鞘炎、手根管症候群の手術を受けた後も自然・労働環境の中で痛みを発症しました。漢方で炎症に対する痛みに対して風、湿、寒、痰濁、瘀血などの自然環境による邪気や病理産物を除き正気不足の血虚、気虚、腎虚を補い、痛みが経絡不通によるものと考え経絡を通じますと痛みが改善し諸症状の改善を見ました。

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