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漢方閑話㉘ 更年期障害

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2018年11月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇50代の女性が「更年期障害」だと言って訪れました。動悸、不安感があり去年あたりから高速道路に入ると怖くなる。そろそろ更年期かと産婦人科を受診しホルモンの低下があるもののホルモン補充療法をするにはまだ早いと言われます。月経周期は26日型ですが月二回あることもあり無胚卵周期が続いている。眠れるようにと安定剤とのどのつまり感から漢方エキス剤Dが処方されますが効果なく、漢方外来に転院し自律神経症にはこの処方が効くからと漢方剤A,Bが処方されます。のどの塞がり感は変わらず漢方剤Dが追加されます。寝てもすぐ目が覚めてしまう。気分の落ち込みが激しく外に出るのも嫌な日が続きます。そこで漢方剤Cが処方されますが1ヵ月半服用しても効果がなくまた処方をA,B,Dに戻します。
◇基礎体温表はつけていませんが月経前一週間ぐらいから特に症状が悪化すると言います。体重は53kg、気力、やる気が出ません。疲れやすく足がほてり布団から足を出して寝ます。足先やお腹は冷えホッカイロを張っている。食欲はあり大小便は順調です。舌は赤く裂紋があります。肩や首筋がこり腰痛もあります。みずおちが硬く月経前には胸が張ります。月経量は近年少なくなったと言います。以上のような症状で数年来漢方剤を服用してきました。何とか生活の質(QOL)を改善し不安感を解消したいというのです。
◇11才で初潮を迎えて以来40年間、月月の月経で女性は腎の精力と肝血を消耗してきました。月経周期の低温期は卵子を育てるために大量の腎精と肝血を消耗します。月経量が減り無胚卵月経が続いているというのは腎精、肝血の不足を現しています。精血が不足しているのですから足はほてり布団から足を出して寝ているのです。腎経は足の裏から下腹部、のどを通り口中に至っています。腎の不足によって水不足となり口が渇き、舌は真っ赤で潤いはありません。咽喉は乾燥しつまります。恐れの感情は腎の支配するところ熟睡できずすぐ目が覚め恐怖感におびえます。数年来の自律神経の失調により気分は塞がり月経期前には胸が張ります。腹が冷えているというのですが舌の赤は冷えを現しません。腎は心に精血を送っています。精血不足により心血は不足し動悸が起きています。病証は肝血を潤し腎精を益し肝鬱を改善することがQOLの改善につながると考えられます。

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